2014年4月20日日曜日

ジャズのカウントの出し方講座

 長らく休載してしまい大変失礼致しました。不定期ですが続きを記載していきます。

 今回は、ドラムではなく、ジャズのヴォーカルやサックス教室の生徒さんの前でお話し、一定の効果があった「ジャズのカウントの出し方講座」の内容を記事にしました。どちらかというとドラマー以外の楽器プレイヤー向きの記事です。もちろん、カウントを出す事はドラマーにも必須のものです。

 ジャズ演奏に於いて、プレイヤーの誰かのカウントで演奏が始まる事が多々あります。カウントを出す人が誤ったカウントの仕方や、不正確でメンバーに伝わりづらいカウントの出し方をしてしまうと、バンドアンサンブルがスタートからつまづいてしまいます。

 早速、動画を貼り付けます。悪い例を3例挙げ、続いて理想的なカウントの例を挙げます。


 悪い例その1 テンポが一定でない

 カウントは、まずテンポをメンバーに伝える目的があります。これが一定でないと、メンバーは演奏できません。

 原因としては、

     ・自ら決めたテンポに自信がない
     ・興奮、緊張している

 つまり、心の持ちようです。皆を待たせても構いません。気持ちを落ち着け、自分の好きなテンポをじっくり決めて、自信を持ってカウントを出しましょう。

 悪い例その2 動きが止まる

 カウントには、グルーヴのニュアンスをメンバーに伝える目的もあります。スウィングのビート、いわゆる4ビートは常に動き続け、流れ続けていてこそです。カウントが止まるプレイヤーはリズムの感じ方も止まっています。1拍ずつの円運動、もしくは弾力のある反復運動を手で表現してみましょう。

 悪い例 その3 1拍目と3拍目が無い

 これが一番多く見られるカウントです。4ビートにおいて、2拍目4拍目を強調するのは間違いではありません。さらに、日本の土着のリズムは1拍目3拍目を強調したものなので、我々は確かに2拍目4拍目を強調する練習をする必要があります。
 だからといって1・3拍目をないがしろにしてはいけません。1・2・3・4拍目をしっかりと感じた上で2・4を強調しましょう。これは、演奏する上でスウィングのリズムの感じ方に大きく関係してくるものです。スウィングのビートは4拍全てが柱であり、そのポイントでリズムが弾んでいくからです。従って、2拍4拍しか感じられていないと柱が半分であるためにリズムがフラフラし、推進力も半減してしまいます
 残念ながら、ジャズ教室の多くの現場でこの事実がスルーされており、これは講師の責任です。

 良い例

  ・テンポが一定である
  ・手が動き続ける
  ・1・2・3・4拍目全てで手を振る

 コツは「拍のカウントと共に手の運動を4回加速させる」事です。

 ジャム・セッション等で、ヴォーカルやサックスなどのフロント・プレイヤーの方は特に、カウントを出す機会が多いです。このカウントをマスターすれば、メンバーがスムーズに演奏に入れるだけでなく、リズムの感じ方が変わり、自身の演奏もよりグルーヴ感が増します。

 この、カウントを出す練習はわざわざやってみる価値がある程、カウントは重要なものです。

2013年5月30日木曜日

自分は○○ドラマーだから

 このように、ジャンルの冠をつけて自称しているドラマーは世の中多くいます。公式ウエブサイトのプロフィールに「ジャズドラマー□□」「ロックドラマー△△」と自ら名乗るドラマーを多く見かけます。
 本当にそのジャンルを愛し、歴史を切り開き、骨を埋める覚悟があるならば、プライドの裏返しなので潔くて素晴らしいと思います

 しかし、「なんとなく」ならば、一刻も早く「○○ドラマー」ではなくただの「ドラマー」を自称した方が良いです。
 なぜなら、自分で自分の音楽的な守備範囲を制限するからです。

 例えば「ジャズドラマー」を自称してしまうと、自分では別け隔てなく何でもやるつもりでも、周囲がそういう見方をしてくれません。「この人はジャズしかやりたくないんだろうな」「8ビート嫌いで、叩けないんだろうな」「ポップスとかロックを馬鹿にしてるんだろうな」と先入観を持たれてしまいます。
 実際自称していて上記の通りにジャズ以外を馬鹿にするドラマーについては、私には理解できないし理解したくもないので、今回議論の対象外とします。先程述べた「骨を埋める覚悟のあるドラマー」とは明らかに違います。自らにプライドを持つことは他者を貶める事に等しくありません。ジャンル分けして優劣をつけ(他の畑を貶め)、自分の畑を決めつけて壁を作って安心する音楽家は確かに存在します。その残念な存在が共演者にストレスを与え、予防のために先述の不要な先入観が生まれる事は仕方ありません。

 ちなみに私橋本学は、ジャズのライブシーンに多く出没しながら、一度たりとも自分を「ジャズドラマー」と名乗った事がありません。それは、自分の音楽の幅を制限しないでどんなシーンででも面白い音楽をやりたいから、という思いが常にあり、周囲にできるだけ先入観を持たないで聴いてもらいたいからです。
 にもかかわらず、最近でも初対面の共演者に「橋本さんはジャズのドラマーなのに今日はスタンダードやらなくてすみません」「ジャズドラマーの方にこんなオリジナルやってもらえるか心配で…」と言われ、その場で全力で否定しました。その日はスタンダードはやらずに、8ビート16ビート中心の魅力的なオリジナルを非常に楽しく演奏させて頂きました。ジャズ=スタンダード・4ビートという考え方も50年くらい前に議論は終わっています。

 ○○ドラマーを自称する危険はもう一つあります。周囲の見方だけでなく、自分を分類する事で無意識に自己暗示にかかる可能性があります。「俺はジャズドラマーだからこれは必要ない、あれも必要ない」というように、出来ない事を放置、あるいは出来る事を制限して満足したりするのならば、非常にもったいない話だと思います。
 海外の名ドラマーはジャンルを簡単に越え、しかも非常に貪欲です。あのボン・ジョヴィのドラマーのティコ・トーレス氏は、「テイク・ファイブ」の演奏で有名なドラマー、ジョー・モレロ氏にジャズ・ドラミングを何年も習っていたそうです。
思えば、自分も他人も無理にグループ分けしてラベルを貼り、安心するという精神は、日本独特のものかもしれません。

 音楽をつきつめる前に、簡単に「○○ドラマー」を名乗らない方が良いです。名乗るなら、相当な覚悟と愛情をもって音楽に望めるようになってからでも遅くはありません。